人間でもステロイドの長期作用で副作用が問題視されることが多いです。ステロイドは両刃の刃ですが、用法・用量をしっかり守って使えばとても有意義な面を持った薬です。
ステロイドはいわば体の中に戒厳令を敷くためのホルモンです。ストレスが体に加わっているときに、それに抵抗する状態を作り出す物です。体の中の生産活動や軍隊の暴発を抑える状態にさせるようなものです。
利点としてはまず炎症を早く、強力に止めることがあげられます。犬では抗ヒスタミン薬が効かないことが多く、アトピーなどの炎症疾患の特効薬です。また抗ショック作用が強力で、ぐったりした状態などでは高用量のステロイドを投与しないと助からない症例もしばしばあります。またある種の腫瘍に対しても抗腫瘍作用があるため一部の腫瘍で使用します。
欠点としては体の免疫力を低下させたり、ステロイド性肝腫大・肝炎を起こしたり、体のタンパク質を分解させて筋肉を萎縮させたり、長期間の使用によりクッシング症候群をおこしたりします。
ステロイドを使う場合には大きく抗炎症量と抗免疫量とに分かれます。低用量(<0.5mg/kg/day)では痒みを抑える作用が中心で、間欠的・低用量(できれば<0.2の隔日)な使用にすることにより長期間の使用でも副作用の可能性を減らすことが出来ます。
自己免疫疾患や腫瘍疾患の場合には高用量(>1mg/kg/day)で使用することもありますが、この場合には副作用の出る可能性が高くなります。病気によっては副作用が出るのを覚悟の上で使用せざるを得ない場合もあります。
ステロイドは個体によって感受性が違い、同じ用量を使っていても副作用の出るコと出ないコがあります。ぱっと見て分かる副作用の第一歩は多飲多尿です。通常の飲水量は40~60ml/kg/dayですが、100ml/kg/dayを越えると明らかな多飲です。
副作用のない薬は存在しませんが、ステロイドは特に用法を間違えたり過量投与すると害が出てくることの多い薬です。
大切なのはむやみにおそれずに、きちんと知って利点と欠点を比べながら、利益のある方を選ぶことだと思います。
ステロイドを使う時にははっきりこれはステロイドですと伝えて使うようにしています。なにか不明な点、疑問な点がありましたらお尋ねください。
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