地球生物代表会議


 ある時、地球にすむ生物が一堂に会して生物の代表を考え合うことになりました。
 
 ヒトの代表が言いました。
「最も知力が優れるのは私たちなのだから、私たちヒトが代表となるのが当然でしょう。」

 それに反論するように昆虫の代表が手を挙げました。
「ヒトはたかだか1種類しかいないじゃないか。我々昆虫は200万種をゆうに超え、世界の隅々に行き渡り、地球上で最も繁栄している動物である。我々をおいて代表となるものは他にはいない。」

 魚の代表が続いて手を挙げました。
「昆虫たちがいくら世界に増えていたって、しょせん陸の上に生きる者じゃないか。地球の7割は海なんだ。世界の海を制覇しているオレたち魚こそが代表にふさわしい。」

 植物の代表がのそのそと手を挙げます。
「動物がいくら増えようとしたって、わしら植物が光合成をして酸素を作りだし、栄養分を生み出さなければやっていけはしないだろう。生物の代表にふさわしいのは、わしら植物だ。」

 バクテリアの代表も負けじと手を挙げます。
「代表というなら数が最も多いものが代表だろう。ボクらバクテリアは陸や海や土の中にさえ生きることができ、数ではキミたちと比較にならないくらいたくさん存在するんだ。キミたちの体の中にさえ、無数の仲間が生きている。ボクらがいなければ、キミたちは生きていくこともできないだろう。」

 すんなり代表が決まると思っていたヒトは驚きました。議場では堰を切ったようにめいめいが自分を主張し合っています。

「空を飛ぶことにおいては鳥が最も優れているのだから、鳥が代表だ!」
「一番からだが大きいのは我々クジラなんだから、クジラが代表だ!」
「一番水中を優雅に漂うことができるのだから、クラゲが代表だ!」

 結局、会議に集まっていた参加者それぞれが、自分こそが生物の代表だと思っていたのです。
 結局その日は代表を決めることはできませんでした。
 後日、あらためて開かれた会議でも代表は決まらず、「それぞれが地球の生物の一員である」ということで落ち着きました。


 以上の話は空想の物語ですが、
現実には僕達は自分たちこそが生物の代表であるかのような考えを持って暮らしていると思います。
 僕達は知性を持っており、それは確かにすばらしいものです。それにより僕達は充実感や幸福感、喜びといった感情を味わうことができます。しかし、知性が生物にとって全てというわけではありません。
 
世界には自分たちとは異なる生き方、仕組みを持っている生命が数多く存在します。僕達はその中でヒトとして生を受け暮らしているのです。

 
自分を大切にすることは良いことです。しかし、自分中心になって他を省みないことは良いこととは思えません。自分たちだけが生を受けているわけではない、そのことを注意しないといけないと思います。


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