生きていたいという思い、生きて欲しいという思い
人のみならず、
すべての生きとし生けるものは生への衝動を持っています
。
生を受けたもの全てがその生を全うできるわけではありません。外敵から襲われたり、不慮の事故で命を落としたり。
その生を全うし、次代への架け橋となることができるのは全体のわずか
です。
そのため、生を受けた全てのものは精一杯の力で生き抜こうとし、子孫を残そうとします。
人においても同じです。生を持つもののひとつとして、生を全うし、次代への架け橋になろうとします。
人においてひとつの特徴となるのは発達した脳を持つが故に、自我を持ち、
意識の中で「生きていたい」「生きて欲しい」と思い感じる
ことができると言うことです。
実際には長い人の歴史の中でも生きていたいと思っても、
自分が望むとおりの生を全うすることをできるのは全体の中で一部の人間だけでした
(今でも飢餓や戦争、貧困のために生を全うできない人はたくさんいます)。
人は歴史の中で、より多くの人が生を全うし、生に喜びを持てる社会を作るべくたくさんの思索を重ねてきました。
多神教・一神教が誕生すると、「
人間は特別な存在である神と特別な関係を持つが故に特別な存在である
」という概念の元、人間自身に対する認識が変化しました。
「生きていたい・生きて欲しい」という願望に過ぎなかったものが「人の生には特別な価値がある」という
特別視・優越感に変わった
のです。
その後階級社会が発達していく中、特権階級とその他被支配層との間には命の重みに差があります。
この時点では命の重みは神から与えてもらったものとして成立していました。
人間自身に価値を認めるということに
なったのは
基本的人権
という概念の創造によります。人権という概念はイギリス名誉革命の前に誕生し、フランス革命を経て洗練されたものになっていきました。
それまでは神があってそのおかげで人間は特別だといっていたのですが、
人権・ヒューマニズム
の登場で、
人間にはそれ自体で特別な価値が存在する
という事になってしまいました。それまで神あってこその特別な人間だったものを、
神なしでも人間は特別だと言い換えた
のです。
最初は絶対的な存在をそのバックボーンに含めていたのでしょうが、人権・ヒューマニズムの概念は独り立ちし、世界にほぼ浸透して現在では人間社会が目指すべき目標のひとつとなっています。
「生きていたい・生きて欲しい」思いから創造された概念はいつのまにか
絶対的な真理とされてしまい、それを疑うことは許されない
ようになっています。かつて願望だったものは、
疑うべくもない当然なこと
と定義されました。
しかし、一方で「権利」の概念もその源は人間の知性にあることは事実です。
知性が人間の持つ特質のひとつであり、生命としてのひとつの特徴であるならば、
権利の概念は世界においては絶対的な真理とは言えず、人間社会の中の基本的ルール
と呼んだ方がしっくり来ると思います。
人間が概念として創造した物を絶対的な真理と見なすことは誤謬を生み出します
。
ルールを決めるという行為は人間が生み出したひとつの知的財産です。ルールを決めること自体は善でも悪でもありません。ただ、
人間のルールは人間だけのものだと言うことを自覚
することは必要だと思います。
人間は「生きていたい・生きて欲しい」という願望を持っています。
その願望のためにいろいろなルールを作り、その思いを成し遂げることができるように努力をします。
なぜ「生きる権利」というものが創造されたか、それは人が「生きていたい」と望み、自分の愛するものに「生きて欲しい」と願ったからです。
社会の誰もが納得できるルールを作り、それを守ることは
自分自身の生のため
であり、
子孫がより良い環境の元で生を送れるようにする
ためのものです。
僕達は社会にいろいろなルールを決め、その元で生きていきます。あまりに僕達の心に浸透しているものは疑うことすら許されないようになっています。教育という名の下に世界観を教えることは洗脳と紙一重です。
ルールを子供達に教えていくときにも常に
そのルールがどこから来たか、何のために来たかと言うことを考えながら教えていく
ことが大切なのかも知れません。
自分にも理由が分からないままそのルールを絶対的なものだと行って押しつけることは、それを教える親自身が洗脳されていて、子供にも洗脳を施そうとしているだけかもしれません。
かつては他人を踏みにじることができることが当たり前の時代でした。人の社会は少しずつ良くなっていると思うのですが、まだまだ良くしていく部分は多々あると思います。
僕達が作り出すルールは一部の人間が快楽を得られるためのものではなく、
より多くの人が「生きていたい・生きて欲しい」という願望を持ち、それを追い求めることができるような社会にするためのルール
として作り上げていくべきだと思います。
それは自分たちの生のためだけではなく、自分達の大切な子孫達への財産となるものです。
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