神の存在否定が目的ではありません。最後まで読んでください。

神が必要でなくなる日


 歴史をたどってみると人間の歴史は凄惨な事柄の連続です。現在でもそれほど変わらず、世界のどこかで戦争が行われています。昔の人はそれを見て、人生とは苦しみだとか、悲しみだとか言いました。
 
この世界は仮の姿で、この世界での人生の終了後に本当の命がもたらされるからそれに備えておかなければならないと言ったのです。

 果たしてそうでしょうか。人生を苦しみや悲しみで語る裏側にあるものは
人生に対する悲観です。自分達に起きている不幸はどうしようもなく、せめて死後は良い暮らしをしたい、その思いが裏側にあります。

 しかし、です。
人生が苦しみや悲しみに満ちたものであるならば、自分の子どもをこの世に誕生させることは子どもに対する背信行為となってしまいます。そんな世界と知っていたのならなぜ自分たちをこの世に誕生させたのだということです。
 悲惨な世界に生まれたためにそこからの救済を望んで生を送る、それでは生まれてきたこと自体に意味がありません。

 自分の人生に意味を感じたい、その思いは人間に知性と感情が宿ったときから持ち続けてきた問題だと思います。人生に意味があるかと考えるとき、人間の行動は2つしかありません。意味を探すか、それとも自分たちで作り出すかです。

 作り出すことが悪いことだとは言えません。自分たちで設定したものであってもそれにより
精神の充実を得ることが出来ることが出来るなら、意味のある行為だと思われるからです。
 しかし、そのことが自分たちの破滅に向かったり、新たな悲しみを作り出すことにつながるならば考え直さないといけません。

 概念で答えを作り出す行為は個人単位では精神の救済をすることが可能です。しかし、人間社会や人類といったもっと大きな単位で見るならそこに救済をもたらすことはおそらく不可能です。多様性を失わせたり、大きな単位ではしごの掛け違いをすることは破滅に直結することだからです。

 
全ての人の人生の目的を絶対的な存在と直結させようと言うのは無理です。「これが正しくて他は全て間違っている」と言う人が2人いると、いずれか、もしくはどちらもが間違っていると言うことは子どもでも分かります。

 絶対的な存在がいるかどうかは極論すればどうでも良い問題です(どうでもよくないから戦争になるのですが)。問題は最終的な目的がそれと直結していると言うことです。

 利権のために戦争をすると言うこと、お互いが信じるもののせいで戦争になること、これらはいずれも追い求めるべき一番大切なものの設定上の問題から来ているものです。

 
多様性は大切です。しかし、その上で人類全体が目指すべき共通のものをの持たないといけないと思います。それをみんなで追い求め、それに反するときには2番目以下のイデオロギーは引っ込める、そういう世界にならないと争いはなくなりません。

 宗教が目指すのは第一には信仰する個人に対する救済です。そしてその個人は自分の救済とその宗教の枠組み内での発想でしか世界を捉えることが出来ません。

 パラダイムを変えるべきです。
一番大切なのは自分の子ども達、その子孫によりよい世界を残すことだと。そして、自分が生きるのはより良い世界を残すための力になるためだと
 子ども達をこの世に誕生させるのは重荷を子ども達に背負わせるためではなく、
より良い世界で喜びや充実感に満ちた有意義な人生をおくってもらうためです。
 「一番大切なことは自分がいかに生きるかではない」というパラドックスが「一番大切なのは自分が死んだ後に子ども達にどういう世界を残すことが出来るかだ」という常識に昇華できたときが人類が本当の平和を迎えることが出来る日だと思います。

 
誰もが自分の夢を持ち、誰もが自分の力を発揮して、誰もが自分自身の人生の主人公として生きることが出来る社会、それがおそらく理想の社会です。そこにはもはや神の存在は必要ではありません。

 今までは絶対者なしでは自分たちの意味を考えることができませんでした。
絶対者の存在を考慮しなくてもそれぞれの人間の心の指針となりうる人間の共通意識が無くては世界から不必要な不幸を無くすことはできません
 
共通意識を人類全体で共有し、その上で絶対者への信仰は各個人の自由である、そういう考え方が必要です。絶対者と直結させた最終目的を掲げ、その成就以外は否定するのでは永久に争いはなくなりません。

 絶対者を否定しようとは思いません。僕にはいるかどうかは分かりません。絶対者が
いてもいなくても全ての人間の精神的な充実感が得られるようになり、それが元で戦争をする必要もなくなる日、それが「神が必要でなくなる日」です。


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