「権利の思想」と「選択の思想」
人は社会を作って生きている動物です。社会の中で人間が生命と財産の安全を保証されて生活するうえでは「
権利と義務
」の思想は現在無くてはならないものです。
それは人類が長い歴史をかけて築き上げてきた財産です。
しかし一方で、権利を絶対的で唯一なものと規定することには疑問を感じ得ません。権利は人間の持つ価値観のひとつだからです。それは社会を生きる上でみんなが同意の元に設定しているルールです。
人間は知性を生存の武器とする生物です。世界を生き延びるために、人間は社会を作ります。
人間が生存すること、そしてより幸福に生きることができるかどうかは、より良い社会を作ることができるかどうかと言うことと直結
しています。
社会の中で生きる上で、みんなが好き勝手に生きているのではそれは社会とは呼べません。
それぞれの行動に規範・制限となるものを作り、それをみんなで守ることによって、社会が安定して存立し続けることができる
のです。
それには社会として何を目指すのかという
共通の目的意識
が必要です。そのひとつは「
社会の中の人がより幸せに暮らせること
」ということです。これには大方の人が異存はないと思います。
しかし、
社会は人間がより良く生きる一方で、それ自体が地球という舞台の上で先行きを間違えないようにしないといけません
。それには、
より正しい世界観、より好ましい目的意識、より筋道の通った手段
を持つと言うことが大切です。
中でもより正しい世界観は大切です。
間違った地図の元では目的地も必ず間違ったもの
になってしまいます。
「
権利
」の思想が意味することは「
人の願望である主観を絶対的な事実、客観的なものと見なしている
」と言うことです。
主観は主観でしかありません。
主観を客観にすり替えることは誤謬を生み出すことにつながる
ことです。
「精一杯生きていたい」これは願望であり主観です。それを「全ての人間には生きる権利がある」とまで言うと主観を客観的なことにすり替える行為であり、どうしても誤謬が入り込んでしまいます。
生きる権利を否定しようとするのではありません
。それは人間社会の中では確かにとても役立つ人類にとっての財産です。
一方で、より現実に即した世界観のもと、それに矛盾しないよう価値観を再構築していかなければなりません。それは人類のより安定した生存のためにはそちらの方が有益だと思えるからです。
人間社会は世界の中では特殊な枠組み
です。
人間同士でしか通じませんし、その枠組みを超えて人の持つ価値観を適用しようとする行為は間違っています。ただ、人間社会そのものにおいては人自身によってその形や目的意識を決めることが可能
です。
「人間には生きる権利がある」、その理論の根底にはエゴが含まれています。それをより正しく言い直すなら「
人はより良く生きていたいと思っている
。
社会はより良く生きたいと願っている人がそう生きられる場所であることを目指している
」と言うことです。
主観でしかない願望を客観的なこととみなすより、主観は主観としておいておいた方が誤謬は少なくてすむと思います。
より良く生きたいと願う人がそうすることをできるのは自明の真実として
権利を持つからではなく、
そうあるよう目指している社会の中で生きているから
です。
さらに言えば、社会の中でより良く生きることができると言うことは願う人がそうできるという
選択肢を用意する
と言うことです。生きることは自明の権利ではありません。義務でもないと思います。
生きていたいと願い、生きることは願望を持ち、その選択を自分ですると言うことです。
選択肢を与えられ、それを理解したならば、どう生きていくかを選択するのは本人次第
です。
「僕は生きていたいから生きる権利がある」と言うのは理論的につじつまが合いません。「
僕は生きていたいから生きることを選択する
」の方がすっきりします。そこにエゴはありません。生きていたいと思うのは生命としては当然の衝動であると思います。
権利には義務が伴います。では行動の選択には何が伴うか、それは
責任
です。生きようとする過程で生じる出来事に対して、その結果に対しての責任は誰でもない自分自身が持たないといけません。
生きることには楽しいことだけでなく、辛いこと、悲しいことも伴うかも知れません。そのリスクも承知でその選択を自分ですると言うことだからです。
自分が行動を選択したと言うことに対しては選択への責任が生じます
。
願望と選択、責任
の組み合わせにおいては主観は主観であり、生み出される誤謬はより少なくてすむと思います。
人間は数多くある生物の中のひとつです。人間だけに生きる権利が与えられているとは僕には思えません。社会として何を目指すかを決めるかは人間次第です。しかし、誤謬を生み出す価値観は自分たちで見直す必要があると思います。
これが正しいという結論があるわけでもありません。より好ましい価値観は自分たちで築いていくしかないのです。
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