ヒトは「高等」な生物か


 人は生物として高等だという考えが今も昔も普通になされています。昔においては(今も人によっては)、人間は他の動物とは違う特別な存在だと思われていました。
 高等・下等とは何をもって言うのでしょうか。体のつくり、能力、地球上での覇権、環境適応能力、いろんなとらえ方があると思います。
 まず結論ありきでは事実を見誤る可能性があります。できるだけ客観的に考察してみたいと思います。

 一番多い意見としては、
人は他の動物よりも優れた知性を持つので高等だというものがあると思います。優れた知性は高等であることの条件でしょうか。
 
意識自分と周囲を区別するということです。知性生命が環境を生き抜く手段として発達してきたものです。意識は脳が発達する上で生まれてきました。外界を感じ、把握し、行動する、それは脳の発達した動物にしかできないことです。さらに大脳が発達した動物では把握した後で自分の価値観を元に最善の行動の選択を行うということができます。

 人間には当然意識があります。犬にもあります。鳥にもあります。
 ではヘビではどうか?と言うと多分答えはヘビなりの意識はあるが、それは人間が持つものとは大分違うと言うことになると思います。知性も同じくです。
 意識ある生命だから優れている、とは必ずしも言い切れないと思います。生にとっての目的は生きることであり、知性はそのための手段に過ぎません

 
今地球上に存在する生物はみな何らかの生きるための手段を持つことで生存し続けてきました。繁殖力を持って生き延びるか、知性で自らの危機を打開していくか、それはそれぞれの種の持つ特徴であり、個性です。
 
それに上下の価値づけをするのは人間のエゴです。

 
その作りや行動パターンの単純さ・複雑さは環境を生きる上においての生物としての戦略が単純か複雑かの違いです。
 例えば細菌類は作りも行動パターンも人間よりはるかに単純です。大昔から基本的な部分はそれほど変わっていません。でもそれはおそらく、
変われなかったというよりは変わる必要がなかったので変わらなかったという方が正確な答えに近いと思います。

 真核・多細胞生物は新しい機能を得ることで環境の変化に適応するという道をたどっています。でも
シンプルな形の方が環境の変化への適応不全による絶滅、のリスクは少なくてすみます

 環境中の限られた条件でのみしか生きられない生物は、限られた条件に適応するための特殊な進化をしています。その
与えられた条件の下で最大限の生存活動・繁殖活動を行うのは生物としての至上命題です。
 しかし、
その条件を最大限に行かそうとするほど必要でない部分をこそぎ落とすことにつながります
 
生存空間での優位性を得る生物ほど、環境変動に対して適応能力を失うというリスクを背負うことになるのです。

 ヒトの登場以前にも多くの絶滅した生物がいます。彼らはその当時の環境にはうまく適応していた種も多くいます。一概に種として至らなかったから絶滅したとも言えないのです。
平穏な環境でどんなに繁栄を極めていたとしても、その種の持つ適応力を超える変化が来たときには、対応できないなら死滅するしかありません
 
絶滅のリスク自体は概ね「高等」とされる生物の方が高い傾向にあります。客観的に考えれば、人間もいずれ絶滅は避けられません。その後は人間が自分たちよりも「下等」だと思っていた種の中から開いた生活空間に適応した種が現れ、覇権を握っていくのです。それは自然の流れであり、なるようにしかなりません。
 
 
高等・下等の分類は主に人間のエゴがつくり出した価値観に属するものです。生物として、単純な形と複雑な形とどちらがすぐれているかという議論はあまり意味がないと思います。どちらも手段のひとつに過ぎないものです。種の繁栄という目的の前には、それぞれの種の持つ特徴は等しく等価値です
 様々な生物がかつても今も存在してきました。長い時間の中でお互いに相互に作用を及ぼし合いながら地球上を生き続け、今も同じ世界に生きています。

 人間の特徴として、
自分が優れていると思いたがるという所があります。それを生んでいるのは自尊心です。社会の形成の上では自尊心がプラスに働くこともありますが、地球上の生物の一因として生きることを考えると、行きすぎた自尊心は人間の存立ということにおいてはマイナス要因です。
 それは
事実を見る目を曇らせ、人間の判断をいびつなものにします。自分たちは優れているという考えは見直すべきだと思います。それは地球のためでも他の生物のためでもありません。自分たちの存続のためです。
 事実を事実として捉え、その中で自分たちのより正確なあり方を考えていくためには、まず
自分たち自身に対する謙虚さが大切なのだと思います。


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