「もうひとつ大きなもの」のために
人が生きる上で目指しているものは人それぞれです。マズローの5段階の欲求説によれば、人間の欲求は低次元のレベルから始まり、段階を経てより高次元のものへと昇華されていくと言われています。それぞれを述べると、
1.
生理的欲求
食欲、睡眠、性欲など生きる上での身体的欲求
2.
安全の欲求
身体の安全、財産の保護などの欲求
3.
親和の欲求
家族や社会に属したいという欲求
4.
自我の欲求
属する社会の中で自分の価値を認められたいという欲求
5.
自己実現の欲求
より自分が自分らしくありたいという欲求
最初は自分の欲望といえるところから始まり、他者との関係を経て最後は自分に戻ってきています。
ひとつひとつ欲求を果たしながら次の段階へと進んでいきます
。一つ下の段階を達成することなくその上の段階に進むことはできません。
食うにも事欠く状態では社会貢献をすることなど考えることもできないと言うことです。
人により段階の昇華のスピードには差があります。生活に困らないようになった状態でもその周りに目を向けなかったり、社会的に成功しても自分を見つめることよりも虚勢を張ろうとする段階までしか進まない人もいます。
欲求レベルが高くなるとその下の段階の欲求に関しての欲求が低くなります
。家族の幸せのためならお父さんはがんばって働きますし、より自分の道を究めたいと願っている人には金やステータスはそれほど意味を感じられません。
マズローの欲求説によれば自己実現が最終欲求とされています。でも僕はその先にはまだ高次の欲求があると思います。それは第六の欲求「
自らを越えたもののために自分を捧げる
」ということです。
第五の欲求とは自分の能力や適性を極めるということです。でも人間は社会で生きる動物です。自分から出発したものが社会に向かい、また自分に返ってきてそれで終わりというのは妙だと思います。
自分の能力や適性が高められた後はそれが活かされる場がないといけません。そしてそれを活かすと言うことが何につながるか、それは社会の発展以外にありません。
自分を高めるのは自分自身のためであり、社会、ひいては次世代の子達のため
です。
マズローの第五の欲求「自己実現」は欲求の昇華の終わりではありません。より良い社会を作るための「自己確立した人間」の誕生です。自分が何をすべきかをはっきりと自覚し、それを実現するための能力を併せ持つ人の誕生、それはより良い社会を創り出すための始まりに過ぎません。
より良い社会はより高次元の欲求を持つ人間がたくさん増えないことにはつくっていけません。皆が自分のことだけを考えて行動しているのでは社会の発展もありません。自分たちでこの世界をより良いものにしていくと考えを持つということです。
世界を自分の利益のために利用しようと考えている人間には人間社会での生きる価値は少ないと思います
。
幸福を求める時も自分自身の幸福それだけを望む行為は疑問です。幸福感は何かを成し遂げたときのご褒美としてもらえるものです。確かに人は幸せになるために生まれてきたのだと思いますが、
欲求が自分止まりでそれ以上に昇華していかないのは本来の姿ではないと思います
。
欲求は昇華されるべきです。しかし、注意しないといけないことは低次元の欲求が叶えられないと欲求レベルが昇華していくことができないことです。精神的なことだけ訴えていても食うや食わずではどうしようもないと言うことです。
何を自分自身の目標にするかは人それぞれです。しかし、自分の欲求レベルは成長とともに昇華されていかないといけません。
より高いレベルに到達することができたら、それをまた社会に還元
していかなければいけません。
人間は飯を食べ、睡眠を取るために生まれてきたのではありません。
自分らしく生き、それが次の世代へと良い形でつながっていく
ことが好ましい形だと思います。
また社会はより自己実現を達成し、その力を社会に還元できる人間を生み出していかなければなりません。
自分のことしか考えられない人間がたくさんできるのは社会がまだ未熟だからに他なりません
。より基礎的な欲求を満たさせることができず、欲求を昇華させることができないためです。誰もがより人間らしく生きられるようにした上で、社会全体でお互いに力を合わせより良い社会を創り出そうという意識を共有すべきです。
かつては生きようと思っても生きることもできない人が多数でしたが、現在では生きたいと思っていなくても生きることができる時代となり、何を目指して生きるべきかわかりにくい世の中になっています。
それぞれの人が自分自身で、自分にとっての「自分を捧げられる大きな何か」を見つけ、それを目指していかないといけません
。
低次元の欲求を求める方が、過程で受けるストレスは大きいような気がします。それら変動しやすく、追い求めているうちに失われたり手に入らなくなったりするからです。高次元の欲求のものほど移ろいにくく、手に入ったときにより大きな喜びを伴うものなのだと思います。
もっと大きなもののためにがんばっているという実感があればより楽に生きられると思います。そこに突き動かしているのは
自分が心から信じるものに向かって自分自身を捧げているという使命感
です。
それを成し遂げるという信念とそのためにどうすればいいかという考え方を指針とすることができるなら、変動する世界の中で自分を見失うことなく生きていけると思います。
このHP内の文章、イラストの無断転載を禁じます。
著作権の一切は二本松昭宏に属します。
あなたのご感想を心からお待ちしております。
おなまえ(ハンドルでも)
メールアドレス(できれば)
性別
男
女
メッセージ・ご感想