ネコ伝染性腹膜炎(FIP)




 ネコ伝染性腹膜炎はウイルス(コロナウイルスの亜属)によって起こる病気で、発症すると非治療時の致死率はほぼ100%で、根本的な治療方法もない恐ろしい病気です。コロナウイルスは通常軽度の腸炎を起こすウイルスですが、それが体内で変異を起こしてFIPのコロナウイルスになると言われています。発症した個体からの直接の感染はないとも言われています。
 ウイルスが感染したら発病という単純な病気ではありません。この病気のややこしいところは
ウイルスに対する免疫と関連して発病すると言うところにあります。
 細胞性免疫主体で、ウイルスに対する免疫が正常に行われれば、特に発病することもありません。
 液性免疫が主体となり、抗体が過剰に産生され免疫異常の状態になると、抗体とウイルスがくっついた
免疫複合体が体で悪さをし、発症につながります。

 症状には2つのタイプがあり、
血管がダメージを受け腹水や胸水がたまって急死するタイプと、神経や腎臓、眼のブドウ膜で悪さをして肉芽腫を形成し原因不明の発熱をおこし長期間を経て死亡するものとがあります。
 診断は臨床症状と血液検査、抗体価の値から行います。
 抗体価の判定については、腸コロナウイルスへの抗体も含めて測定されるため健康個体でも高く測定されることがあること、急性期で抗体が抗原と結合してしまうと低く測定されることがあるので注意が必要です。
 体の免疫反応を抑えるための
ステロイド剤が治療の中心となりますが、それでも致死率は非常に高いものとなります。特効薬は残念ながらありません。