全身性紅斑性狼瘡(SLE)




 別名全身性エリテマトーデスとも言われる病気で、自己免疫によって起こる多臓器疾患です。

 動物の体は、異物に対しての免疫力を持っています。
 異物が体内に侵入してきたと関知した場合、異物=
抗原に対して、それを撃退するための抗体を作り、攻撃を行って異物を排除しようとします。
 抗原と抗体が結びついたものが
抗原抗体複合物ですが、体の中で免疫反応が長期に渡って起こる場合には、多量に産生された抗原抗体複合物の処理がしきれなくなり、体の中に複合物が溜まって、体に悪影響を及ぼします。

 全身性紅斑性狼瘡は、血液成分や腎臓、関節、皮膚に対して
自己抗体が産生され、もしくは抗原抗体複合物が沈着することにより、全身のいろいろな症状が引き起こされる疾患です。

 症状は関節炎による
全身硬直、休息時に悪化し軽い運動後に改善される関節の硬直、全身性筋萎縮の他、炎症による発熱、沈鬱、食欲不振などが見られます。筋肉や関節を触診したときの痛みもしばしば見られます。
 また、血液成分や腎臓、皮膚などへの障害により、
自己免疫性溶血性貧血、血小板減少症、腎炎、皮膚炎、多発性筋炎、無菌性髄膜炎など様々な症状が起こります。
 通常、関節炎や皮膚炎は左右対称性に起こります。


 レントゲン像では、目立った像が見られないこともありますが、
関節周囲の腫脹、滑液滲出の増加、骨膜炎などが見られます。リウマチ様関節炎と異なり、関節構造の破壊はあまり見られません。
 血液検査では、
白血球の増加がよく見られます。
 また、全身性紅斑性狼瘡の特徴として、細胞核への抗体である
抗核抗体が高率で確認されます。

 診断基準として用いられるのは以下の基準です。

1 複数の臓器の障害
2 抗核抗体陽性
3 血球への自己抗体、滑膜への抗原抗体複合物沈着

 1と2を満たしていれば暫定診断、全てを満たせば確定診断となります。3は実行できないこともあります。

 鑑別診断としては、
特発性多発性関節炎、リウマチ様関節炎、多発性関節炎、多発性筋炎、細菌性心内膜炎、細菌性関節炎などがあります。

 まず安静と運動制限を保つことが必要です。次に、
ステロイド免疫抑制剤により、免疫反応を抑えます。
 
予後は常に要注意です。また、腎不全の徴候がでている場合は好ましくありません。