犬回虫




 犬回虫は小腸に寄生虫が感染する病気です。主な感染経路は母犬の乳を介してです。その他環境中の虫卵を口にする経口感染と、母犬の胎盤を通しての感染が知られています。回虫は人間特に子供への感染が知られています。人間がかかったときには幼虫移行症(肝臓・脳・目・筋肉への移行)となり、人畜共通伝染病として知られています。犬が感染しているときには人に感染しないよう環境中に虫卵が出ないように気をつけることが重要です。
 犬が感染したときの症状は
下痢、腹部膨満、虫体の吐出、無症状です。子犬が一頭かかっていたときには兄弟犬をすべて駆虫する必要があります。感染したときに虫卵を排出するのは子犬だけであり、成長した犬が感染しても成虫とはならず、体の中で幼虫の段階で成長を止め、「眠っている」状態となります。犬が妊娠すると起き出して胎盤や乳腺から排出され、子犬に感染します。感染した虫は体の中を「巡って」から気管に入り、そこから消化管に移って最終的に腸に行く複雑な経路をとります。
 薬を使えばおなかの中にいる虫は駆虫することができますが、腸に至るまでに体の中を巡っている状態の虫は駆虫することができません。その巡っている虫が腸に入ってきて成虫になると環境中に卵をばらまきます。産卵する卵の数は他の寄生虫よりもとても多く、メス1匹が1日に約2万個の卵を産むと言われています。環境中の卵は再感染と他の犬や人への感染を起こします。卵は産卵時は未成熟卵で感染能力はありません。約2-3週間で感染能力を持った成熟卵となります。
 従って、幼犬では2〜3週間毎に生後3ヶ月令まで繰り返し薬を飲ませて環境の虫卵汚染を防ぐ必要があります。環境の清浄化には土の焼却/交換の他、漂白剤(1%塩素)の20倍希釈液で感染性が低下すると知られています。
 通常犬が成長すると卵は排出しませんが、3ヶ月令を越えて虫卵を排出する個体は一生排出する可能性があります。
 また、子犬の時に回虫感染が見られたメス犬が妊娠・出産すると、その子どもも回虫感染が見られるようになります。妊娠時から駆虫薬を飲ませて子どもへの感染を防ぐ方法もあります。