門脈大静脈シャント




 消化管から門脈を経て肝臓に至る血管が大静脈にシャント(抜け道)を作ることにより、本来肝臓で解毒されるはずの物質が体循環に直接入り込んでしまう病気です。
 膵臓や腸管からは肝臓の生長を促す物質(
インスリン・グルカゴン,etc)が出ていますが、それが肝臓に至らなくなるために、肝臓が通常よりも小さなものになります。

 先天的なものと後天的なものの2種類があります。
1.
先天的
 血管の奇形で起こるため通常シャント血管は1本です。肝外性(63%、小型犬で多い)と肝内性(35%、大型犬で多い)に分かれます。肝内性の方が外科処置は難しくなります。
2.
後天的
 門脈高血圧(
肝硬変大静脈閉塞性疾患)が存在するために二次的に生じるもので、シャント血管は通常複数あります。

 症状は毒性物質によって起こるものが主で、
沈鬱、発育遅延、体重減少、嘔吐、下痢、食欲不振、多飲多尿、尿酸アンモニウム結石、神経症状です。特にアンモニアやメルカプタン等は中枢神経に働き、肝性脳症と呼ばれる状態を引き起こします。神経症状は食後に悪化することが多いです。

 門脈造影X線検査が確定診断ですが、それには麻酔と開腹手術が必要ですので血液検査、単純X線検査、超音波検査によって暫定診断を行います。血液検査では
血清胆汁酸(絶食時及び食後2時間)が最も有用とされています。腸内で産生されたアンモニアが解毒されずに血液中にはいるため高アンモニア血症も起こります。

 治療は外科的もしくは内科的に行います。
 根治的な治療は外科手術です。
シャント血管の結紮によりシャントの遮断と肝臓への血液流入が果たされます。手術の危険性としては麻酔の問題と結紮後の門脈圧の亢進があります。徐々に時間をかけて結紮をしていくアメロイドコンストリクターというものも使われています。
 内科治療の目的は
毒性物質による影響を抑えることです。
 蛋白はアンモニア産生の元となり便秘は毒性物質の吸収を促しますので、
中等度の蛋白制限食高線維食を与えるようにします。腸の中を酸性にさせ、毒性物質の産生と吸収を抑えるラクツロースや腸内細菌数を減らす抗生物質などを内服します。
 
胃腸管からの出血は症状を悪化させますので寄生虫感染などにも気をつけましょう。