リンパ腫




 血液の腫瘍の一種であり、血液中でリンパ球が無秩序に増殖します。中年以降の犬に多く性差はありません。以下のタイプに分かれます。

多中心性リンパ腫(約80%)表層リンパ節腫脹、60%は無症状
前縦隔リンパ腫 (約20%)縦隔・肺門リンパ節腫脹
腸型      (<10%)



末梢リンパ節の腫脹から発見されることが多く、進行すると筋力低下、抑うつ、食欲不振、嘔吐、下痢などを見ます。その他の症状として貧血・血小板減少症や肝・脾腫、高カルシウム血症、二次的な細菌感染がよく見られます。治療しないと発生から末期までが速やかに(1-2ヶ月)進行します。
 化学療法に対して反応がよいことが多いので、点滴しながら抗癌剤を注射する治療に入っていきます。治療初期は内服薬も併用します。最初は1週間に1回ずつ、落ち着いてきたら数週間毎の注射に間隔をあけていけます。




 目指す治療の目的は「寛解」という症状が出ていない状態を維持させることです。人間では寿命が長いのでガン細胞を全て殺す「完全治癒」を目指しますが、犬では1年長生きすることは人間の4年間に相当するため「生活の質の改善と寿命の延長」が目標となります。寛解状態では痛みも苦しみもなく、健康なコと同じように生活できるようになります。
 寛解状態での再発率は治療プロトコルによって違いますが、最も成績の良いと報告されているUW-Mプロトコルでは寛解/生存の中央値はそれぞれ36週/51週と報告されています。
 時期の予想は不可能ですが、治療の途中でほとんどの犬は再発をします。その時には救命治療プロトコルに入ります。このときには70%の犬が応答し、寛解持続期は平均2-5ヶ月です。
 悪性の腫瘍の中でも数少ない化学療法に反応の良い腫瘍です。治療したときの6ヶ月以上の寛解率は90%以上であり、寛解の状態では健康なこと同様に過ごせます。