膝蓋骨内方脱臼




 膝蓋骨というのはいわゆる膝の皿のことで、通常は大腿骨の一番下側の溝の上をスライドしています。膝蓋骨がその溝からはずれ、足の運動に障害となる状態が膝蓋骨内方脱臼です。
 小型犬が遺伝的に素因を持っていることが多く、若いうちから大腿部の筋肉の配列異常が基礎にあります。通常は筋肉


に引っ張られたときに力が溝の上にかかります。成長期にしっかり膝蓋骨からの圧力がかかることにより深い溝が形成されます。脱臼を繰り返しながら成長すると、溝は深くならず、さらに脱臼しやすくなります。
 症状は跛行および進行した個体では歩行困難を起こします。はまっているときには健康に歩けますが、
脱臼に関連して炎症反応が起きると痛みを起こします。急性の痛みに対しては鎮痛剤と安静で治療します。
 若い年齢の時から発症するものと、ある程度老齢になってから発症するものとがあり、若い時期から症状の出るコにおいては
いびつな力が断続的にかかることにより、大腿骨と下腿骨が変形していきます。慢性経過のコにおいては悪いなりに何とか生活できることが多いようです。
 若い発症のコにおいては手術をしないと、骨の変形が進行して歩けなくなることがあります。徐々に進行する病気であり、一度曲がってしまった骨は元通りにはならないため、早い発症のコにおいては早期の手術が良いかもしれません。
 肥満や無理な運動は関節に負担をかけ、痛みを起こしやすく、また進行を速くしますので、普段の生活からまず注意をしましょう。