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膵臓からのインスリンの分泌量の絶対的な不足、あるいは組織でのインスリンの働きが低下することによっておこる病気です。人ではほとんどは生活習慣によって起こる病気ですが、病気のメカニズムが人とは異なる部分が多いです。
インスリンは血液中のブドウ糖を細胞内に取り込んだり、体内で脂肪やたんぱく質を合成する働きをもつホルモンで、取り込めなかった糖分が尿に含まれるようになるため、糖尿病と呼ばれます。
犬は遺伝的なインスリン不足が原因のことが多く、その他膵炎・肥満・感染が原因と報告されています。犬ではほとんどの症例が絶対的なインスリンの分泌不足となっています。
ネコでは膵臓のアミロイドーシス変性、肥満・感染の他、他の病気・薬物と関連した一時的なグルコース中毒(高血糖が続くとインスリンの分泌/働きが低下する)が多いです。症例の約50-70%はインスリンの分泌不足であり、残りは一部の分泌能力は残っているとされています。
肥満は身体の細胞がインスリンを活用しにくい状態にするので重要な要素です。その他、腎臓の病気や雌犬の発情期に一時的な糖尿が見られることもあります。
糖が尿中に排出されるときに一緒に水分を引き連れて出ていってしまうので、尿の量が著しく増加します。のどが渇くため水を大量に飲むようになります。健康な動物の飲水量は1日に40〜60ml/kgですが、糖尿病では100ml/kg以上になることが多いです。
インスリンが不足するとブドウ糖を細胞内へ吸収することができないので細胞はエネルギーを得られなり、食欲の増加に関わらずやせてきます。その他、腎不全や白内障、膀胱炎や細菌の二次感染などの病気を併発したりすることもあります。急性期にはケトアシドーシス(*)などの症状を起こします。
ケトアシドーシス:ネコで特に多い状態ですが、糖尿病に飢餓・脱水が加わると、循環血液量減少とケトン血症を起こして虚脱状態となることがあります。このときはまず入院・点滴を行い、循環血液量を回復させてからインスリン治療をする必要があります。放置すると命に関わりますので早い処置が必要です。
診断は尿検査と血液検査によります。
食餌の改善が必要で、高食物繊維・低脂肪の食餌がおすすめされます。食物繊維は食後の高血糖を予防し、体重を減少させるのに役立ちます。
食餌だけでコントロールできないときにはインスリンの注射をします。
インスリンによるコントロールの量は個体毎に違い、うちすぎると低血糖を起こして虚脱・神経症状を起こします。インスリン注射後に低血糖症状を起こしたときにはブドウ糖液を飲ませて血糖値を上昇させる必要があります。
ネコの一時的な糖尿病は治療によりインスリンが必要なくなるものもありますが、インスリンの絶対的な欠乏がおきている個体(イヌのほぼ全て、ネコの50-70%)では一生涯のインスリン治療が必要となります。ネコでインスリンの分泌能力がある程度残っているときには経口血糖降下剤が効果的なこともあります。イヌには通常効果がありません。
インスリンの長期治療を行うときには症状に合わせて微量な量調整と血液検査が必要になります。完治というよりはコントロールしながらのおつきあいという形になります。うまくコントロールできているときには健康なことほぼ変わらない生活が期待できます。
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