鉛中毒




 誤って鉛を摂取して、中毒となった状態です。

 鳥は胃の中に石の粒を溜め、消化の助けにする(グリット)という体の仕組みを持っています。また、好奇心が強く、かじって遊んでいるうちに飲み込んでしまうという事故も起こります。
 カーテンのおもりやハンダ、釣りのおもり、その他のところには、しばしば鉛が使われています。鉛は比較的柔らかくかじり取りやすいため、かじって飲み込んでしまうことがあります。

 鳥は取り込んだ鉛が筋胃の中にグリットとしてとどまる傾向があるため、その間吸収が続いてしまいます。
 取り込まれた鉛は全身の臓器に運ばれ、取り込まれます。影響を受けやすい臓器は血液・造血器系、神経系、消化器系、腎臓などです。

 摂取から数日(3-4日)たってから、元気・食欲の低下、居眠り、吐出、下痢、多尿、尿の色調の変化、運動失調、視覚消失、頭部下垂、旋回、けいれんなどの臨床症状が現れます。
 急性中毒では溶血反応が起こりますが、ヘモグロビン(赤色)から産生されたビリベルジン(緑色)が尿や便に排出されるため、便・尿の色は黄〜緑に変化します。ボウシインコやヨウムなどでは赤いヘモグロビン尿が見られます。
 中枢神経に対する神経障害によって、意識の低下や精神異常、運動障害が起こるほか、消化器への末梢神経障害によって消化器の弛緩性麻痺、食滞や便秘が起こります。前屈みの姿勢や、腹部をつついたり蹴ったりなどの腹痛姿勢も見られます。

 診断は、臨床症状と異物摂取の稟告、レントゲンでの鉛の陰影などによって行います。
 治療は、鉛のキレート剤の投与、鉛の排出促進、そ嚢の洗浄、神経症状や免疫低下、消化器症状などに対しての対症療法などを行います。
 全身状態の低下に対しては、強制給餌や輸液、保温などを考慮します。

 鉛中毒は、家の中で思わぬ形で遭遇する中毒ですので、普段から生活環境を見直し、事故が起こらないように注意する必要があります。