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腎臓は、血液中の老廃物を体外に排泄する働きや、体液のミネラルや浸透圧のバランスを調節する役割を担っている、体の中でも最も大切な臓器のひとつです。
急性腎不全とは、何らかの原因によって腎臓が急激なダメージを受け、排泄能力・体液調節能力が低下するために、様々な症状が現れるものです。
慢性腎不全では、腎臓の能力が長期間にわたって段階的に低下していくため、ぐったりする以前から多飲多尿などの症状が見られますが、急性腎不全では急な発症となるのが特徴です。
原因となるのは、
腎前性の要因:腎臓の血流量減少
極度の脱水、やけど、失血、急性心不全
腎臓の要因:腎尿細管の変性・壊死
腎虚血、中毒(エチレングリコールなど)、敗血症、腎炎、高Ca血症
腎後性の要因:尿の排出不能→尿流の停滞
尿道結石、閉塞性腎疾患
などです。
腎臓の細胞は酸素欠乏と毒性物質に弱く、様々な原因で、腎臓の細胞はダメージを受け、死んでしまいます。
症状は、通常以下の順に進行します。
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導入期:
腎臓の機能障害が起こってからBUN・CREが上昇するまでの間です。
腎臓のダメージは起こっていますが、血液検査でも検出できませんので、発見は困難です。
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維持期:
腎臓のダメージから、老廃物排泄機能の低下、電解質調節機能の低下などが生じ、BUN・CREが上昇している時期です。
乏尿や無尿は、腎臓の尿産生が極度に低下した危険な状態です。 |
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回復期:
残った組織が代償的に機能を増大させ、しだいに腎臓の機能が回復する時期です。多尿になるため脱水に注意が必要です。 |
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急性腎不全では、それまで元気だった動物が急に調子が悪くなることで気づきます。
症状は、不整脈、嘔吐、下痢、低体温、出血時間延長、二次性敗血症、乏尿など、老廃物の体内の蓄積や腎臓機能の低下を反映した多様なものです。
血液検査で、腎不全を反映する数値の上昇が見られます。また、場合によりレントゲンや超音波検査を行い、急性腎不全になった大本の原因がないかを調べます。
尿道結石の時には、膀胱が過度に膨張しているのが分かります。
尿の濃さを見ることで原因の類推に役立ちます。
腎臓に病変がある場合には、尿の濃縮能力自体も低下していますので、通常薄い尿を排出するようになります。この場合の尿比重は、イヌで<1.03、ネコで<1.035となります。
それに対して、腎前性の要因では、腎臓の血流量減少が原因となっていますので濃い尿を出すようになります。この場合の尿比重は、イヌで>1.03、ネコで>1.035となります。
まず原因を見つけ、それを治療することが必要ですが、この病気になるとぐったりしていることが多いので、静脈輸液をしながら保温を行い、ちゃんと尿をできるようになるまで集中看護が必要です。場合により利尿剤が必要です。
早急に利尿処置や閉塞の解除を行わないと高率で死亡します。
予後は原因と組織のダメージの程度によります。腎臓の組織のダメージが軽度であれば予後は良好ですが、腎臓の組織が大きなダメージを受けていると、急性期から回復しても慢性腎不全となる場合もあります。
腎臓のネフロンという構造は傷つくと回復しません。構造の75%が失われると機能不全となります。
急性腎不全の回復期においては、組織が死んで機能が低下した分を、それ以外の部分ががんばって働き、機能を補うようになって回復します。
急性腎不全の治療は、いわば、体が何とかやっていけるようになるまでを支えるためのものです。
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