攻撃行動




 人を咬む癖は飼い主や周囲の人にとって危険であり、時として飼育を不可能にしてしまうこともある重大な問題行動です。一口に咬むと言っても原因がいくつかあり、原因ごとに対処方法はまるきり違います。間違った対処をするとさらに問題行動が悪化する可能性がありますので、まずなぜ咬むのかをはっきりさせる必要があります。

優位性攻撃
 
自分は偉いと思っている犬に対して、その優位を脅かす行為を人間が取ったときに起こります。いわゆるアルファシンドロームです。人と犬の上下関係をうまく築けなかったために人間がなめられているのが原因です。人間はリーダーではなく召し使いとして認識されています。詳しくはこちらを参照下さい。

恐れによる攻撃
 恐怖の感情により攻撃を行うもので、
恐怖の対象から逃げられなくて追いつめられた時に起こります。幼犬時の不適切な社会化と罰が原因のことが多いです。この攻撃が見られる犬に罰を与えると状態は悪化します。また、怖がっているときに飼い主がなだめると反応強化の褒美となることがあります。通常攻撃とともに恐れのシグナルが見られます。詳しくはこちらを参照下さい。

学習による攻撃
 
人間を咬むことは楽しくていいことだと学習するものでいわゆる「じゃれがみ」がこれに当たります。手を咬ませて遊んでいたり、興奮させていたりすると犬は噛むと楽しいと学習し咬む行動はエスカレートしていきます。
 まず家族の人みんながきちんと状況を把握し、犬に対する接し方をあらためる必要があります。咬まれたら「痛い!」と言ってその場を去るなりし、犬に構わないようにします。咬むことにより人の注意を引くことができるのが一番のご褒美なので、咬んだときには一切無視して「咬むと構ってもらえない」と犬に感じさせる必要があります。犬に道徳心を求めても無意味です。
 おりこうさんにしているときに構ってもらえるという風に統一してください。
 この問題行動において犬は悪くありません。一番の問題点は飼い主の接し方です。

占有性攻撃
 
犬が自分のものだと思っているものを取ろうとした時に起こるもので、自分より上位と認めている人間にも抵抗することがあります。渡さない時は罰を与えるより、一旦無視する方がいいでしょう。そういう状況を作り出さない方が一番なので、魅力的なおもちゃは隠したり、場合により嫌な味をつけたり音の出る仕掛けを使ったりすることも効果的かも知れません。「座れ/伏せー待て」などの服従訓練のし直しはしておいた方がいいでしょう。固執の弱いおもちゃをくわえさせた上でドライフードを1粒与え、おもちゃを離したら合令をかけ、褒めるといいでしょう。優位性や恐れなど、別の要因がないか注意しないといけません。

縄張り/保護性
 
群を守ろうという意識から起こっているもので、群のメンバー以外が対象となります。群を守ろうということ自体は悪いことではありませんが、対象が間違っているということとリーダーをさしおいて犬が行うということが問題です。威嚇行動が明瞭に見られ、雌雄関係なく起こります。不適当な報酬により行動が強化されていないか注意する必要があります。服従訓練をし直し、反対条件付け・系統的脱感作により治療します。罰は用いてはいけません。吠えられる人が近づいてきてもおとなしくできるようにし、最終的にはその人からおやつをもらえるようにします。

雄同士の攻撃
 他の雄犬に対してされるもので、
お互いの支配性欲求が高く、順位がきちんと決まっていないときによく起こります。雄性ホルモンの影響が大きいです。ケンカしているときに手を出すと飼い主が咬まれることがあるので注意が必要です。大きな音をさせ一旦気を逸らす事が役に立つかも知れません。威嚇が明瞭です。きちんと順位が決まればそれ以後はしないのが普通です。ただし、飼い主と一緒にいると「虎の威を借る」ことにより、自分より強そうな相手に向かっていくこともあります。
去勢すると攻撃行動が減少することが期待できます。

補食性攻撃
 
相手を食べるためにおそうものです。威嚇行動は見られず、また手加減はしないためダメージは大きいです。対象の嫌悪や服従訓練のし直しをしますが、本能的な行動と結びついているため治療や予防は困難です。特に子どもが対象となったときには悲惨な結果となることがあるため飼育は困難かも知れません。

突発性攻撃
 イングリッシュスプリンガースパニエルで起こるもので、
脳の発作と関連していると言われています。急に空中を見上げた後、豹変したように周囲の人間に襲いかかり、発作が終わるときょとんとしておどおどしているとのことです。発症の時期予測や治療は不可能です。手加減は一切しないで攻撃するため、咬まれたダメージは深刻なものとなります。
ぼーっとし始めたら周りの人間が避難するしかないようです。